長唄「小鍛冶」

夢のお告げを受けた一条天皇の命により勅使の橘道成は、京の刀匠 三條小鍛冶宗近(さんじょうのこかじむねちか)の元を訪れ、剣を打つように命じます。しかし、宗近はしかるべき相槌がいないため出来ないと訴えますが聞き入れてもらえません。
困り果てた宗近は、氏神様である稲荷明神に救いを求めて参詣します。
そこで、不思議な童子と出会います。
童子は中国の伝説や日本の日本武尊(やまとたけるのみこと)の物語を語り、宗近に激励の言葉をかけ、相槌を勤めるように約束します。不思議がる宗近は正体を確かめようとしますが、童子は名乗らず、ただ剣を打つ準備をするように言い残して稲荷山に消えていきます。
家に帰った宗近は身支度を済ませて、鍛冶壇で心静かに礼拝をしていると、稲荷明神のご神体である狐が精霊の姿で現れます。先ほどの童子は稲荷明神のそのものだったのです。
稲荷明神と宗近が壇上に上がり、互いに呼吸を合わせ槌を打ち合わせます。こうして表には「小鍛冶宗近」の銘が、裏には「小狐」の銘が刻まれた宝剣「小狐丸(こぎつねまる)」が出来上がったのです。

その剣を、勅使 橘道成に捧げて曲は終わります。